
そのきっかけは、職場の仕事量が増えたことが原因でした。
当時の私は中間管理職的な役割を任されるようになっていました。
そのため本来の業務以外に、上司との打ち合わせや部下の指導などに時間を割かなければならなくなったのです。
それでも最初のうちは周囲の期待に応えようという思いでいっぱいでした。
会社に残ってサービス残業することも、それによって仕事がうまくいくのならかまわないと思っていました。
実際に私が無理をすることで、業務が順調に進んでいたこともありました。
その原動力となっていたのは上司から褒められることや、部下から期待されているのを実感できたことです。
自己評価の低い私にとっては、他人からの評価が何よりも大切でした。
しかしそのように無理をすることが、長続きすることはありませんでした。
無理がきかなくなったのは、任される仕事量が増えていったことが原因です。
サービス残業だけで仕事を処理しきれなくなると、家庭に持ち帰ってやることになります。
しかし毎日の帰宅が遅いのに、帰ってからもさらに仕事をしていると家族から不満が出るようになりました。
そのため持ち帰った仕事を片付けるのは、家族が寝静まってからということになります。
その結果、深夜2時~3時まで仕事をしていたこともありました。
それでも仕事が片付かなくなり、上司からは叱責されることが多くなりました。
またこのような上司の態度に部下は敏感に反応するものです。
そして部下も同様に私に対して不信感を抱くようになってしまいました。
このように上司や部下からの評価が下がることは、私にとっては耐え難いほどのストレスとなっていました。
そのうちに職場の上司、同僚のすべてが私に対して軽蔑感を持っているように思えてきました。
それは処理しきれないほどの量の仕事を抱え、どれも中途半端になってしまっていたからです。
私は自分のせいで職場全体に迷惑をかけてしまっていると思っていました。
また上司や部下から声をかけられることが、とても怖く思えました。
上司が呼び止めるのは何か小言を言いたいからで、部下が呼び止めるのは職場の不満を口にしたいとからとわかっていたためです。
この頃の私には、そのような話を聞く余裕などもうありませんでした。
その後も仕事の忙しさは変わらず、朝6時から勤務しなければならなくなりました。
私は焦燥感や不安感を強く感じるようになっていました。それに加えて頭痛、めまいの症状がひどくあらわれるようになり、ついには廊下にへたり込んでしまったほどです。さすがにこの時はもうダメだと思い、病院を受診することを考えました。
その翌日に精神科を受診したところ、うつ病と診断されました。
医師から指示されたのは、3週間の休養をとることです。
このとき私は「やっと休むことができる」という安堵感と、「休むことで皆に迷惑をかける」という罪悪感でした。
家族からは「こんなになるまで働いて、まだ仕事の心配してる」とあきれられました。
今思うのは、うつ病を予防するためにも頑張りすぎないことが大切だったということです。